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枡形虎口とは?内枡形・外枡形の違いと城を守る仕組みをわかりやすく解説

高麗門を抜けたあと枡形空間で向きを変え、櫓門へ進む枡形虎口の構造を描いたイラスト

お城の門を一つ突破しても、すぐに城内へ入れるとは限りません。

門をくぐった先に、石垣や土塁、塀で囲まれた空間があり、その奥にもう一つの門が待ち構えていることがあります。

しかも、二つの門が一直線上に並んでいなければ、攻め手は途中で向きを変えなければなりません。

このように、二つの門と囲まれた空間を組み合わせ、敵の進行方向や速度を制限する入口構造が、枡形虎口ますがたこぐちです。

枡形虎口を見るときは、門の形だけでなく、

  • 門を抜けたあとにどちらへ進むのか
  • 二つ目の門はどこにあるのか
  • 門の間を何が囲んでいるのか
  • 城の内側と外側のどちらに枡形があるのか

まで観察することが大切です。

この記事では、枡形虎口の基本構造、攻め手が進まされる順番、内枡形と外枡形の違い、馬出や喰違虎口との違いを、図解を交えながらわかりやすく解説します。

この記事のポイント

・枡形虎口は、二つの門と囲まれた空間を組み合わせた入口構造
・攻め手を直進させず、枡形内で向きを変えさせる
・内枡形と外枡形では、枡形空間を設ける位置が異なる
・門だけでなく、石垣・土塁・塀・櫓・通路を一体として見る
・馬出や喰違虎口とは基本構造が異なるが、組み合わされる場合もある

枡形虎口とは?

枡形虎口ますがたこぐちとは、門と門の間に、方形または方形に近い囲まれた空間を設けた虎口です。

一般的には、

  1. 城外や前方の曲輪から一つ目の門を通る
  2. 石垣・土塁・塀などに囲まれた空間へ入る
  3. 空間の中で進行方向を変える
  4. 二つ目の門を通って奥の曲輪へ入る

という構造になっています。

「枡形」という名前は、米や酒などを量る四角いますのような形をしていることからそう呼ばれます。

ただし、実際の枡形虎口が、すべてきれいな正方形になっているわけではありません。

地形や曲輪の形、周囲の堀、築城された時期、その後の改修によって、長方形に近いもの、不整形なもの、通路が何度も曲がるものなど、さまざまな形があります。

枡形虎口の構成

枡形虎口を理解するときに大切なのは、門だけを見ないことです。

虎口は、お城や曲輪へ出入りする場所全体を指します。

そのため、枡形虎口には次のような要素が含まれます。

  • 一つ目の門
  • 二つ目の門
  • 門と門の間にある空間
  • 通路
  • 石垣
  • 土塁
  • 堀や土橋
  • 周囲の曲輪

門や石垣、土塁、塀など、枡形虎口を構成する建物の一つです。

門の建物が失われていても、石垣や土塁の切れ目、門礎石、通路の曲がり方などから、かつての枡形を確認できることがあります。

虎口そのものの意味や、平虎口・喰違虎口などの基本的な種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。

虎口とは?お城の入口に隠された守りの工夫をわかりやすく解説

枡形虎口の基本構造

枡形虎口の形は城ごとに異なりますが、基本的な構成要素を整理すると、次のようになります。

構成要素 主な役割
一つ目の門 敵の侵入を最初に止め、通過できる幅を限定する
枡形空間 敵の進路や向きを制限し、動きを遅らせる
二つ目の門 奥の曲輪への侵入を再び止める
石垣・土塁 枡形空間を囲み、通れる場所を限定する
塀・櫓 枡形内の監視や防御を支える
曲がった通路 敵が勢いを保ったまま直進することを妨げる
堀・土橋 虎口へ近づける場所や方向を限定する

門の名前や形式は城によって異なる

二つの門は、次のような名前で呼ばれます。

  • 一の門・二の門
  • 外門・内門
  • 高麗門・櫓門

近世城郭では、外側に高麗門こうらいもん、内側に櫓門やぐらもんを置く構成がよく知られています。

高麗門を抜けたあとに向きを変え、大型の櫓門へ進む形です。

ただし、すべての枡形虎口が高麗門と櫓門の組み合わせではありません

二つとも高麗門形式の例や、冠木門などを組み合わせた例もあります。

門が一部失われている枡形や、石垣ではなく土塁を中心に構成された枡形もあります。

石垣造りだけが枡形ではない

枡形虎口というと、大型の石垣と立派な門に囲まれた近世城郭を思い浮かべやすいかもしれません。

しかし、山城や中世城郭では、土塁を折り曲げて枡形状の空間をつくる例もあります。

つまり、枡形虎口の中心となるのは石垣の有無ではなく、囲まれた入口空間と、そこを通る進路の構成です。

土塁の役割については、こちらの記事で詳しく解説しています。

土塁とは?お城を守る土の壁の役割と見どころをわかりやすく解説

枡形虎口はなぜ敵の進行を止められる?

枡形虎口の本質は、敵を必ず閉じ込めることではありません。

敵が自由に進める方向を減らし、速度を落とし、守備側が対応しやすい状況をつくることにあります。

攻め手の動きを順番に見てみましょう。

一つ目の門で進入できる幅を絞る

攻め手が枡形虎口へ入るためには、最初に一つ目の門を通らなければなりません。

門が開いていたとしても、城外の広い場所から、そのまま大人数が横一列で入ることは難しくなります。

門の幅に合わせて隊列が細くなり、前方と後方の間隔も変化します。

もちろん、門の規模や前面の地形によって状況は異なるため、必ず少人数ずつになるとは限りません。

それでも、通過できる場所が門に限定されることで、攻め手が自由に広がって進むことは難しくなります。

枡形内で進行方向を変えさせる

一つ目の門を突破したあとも、攻め手はそのまま奥へ直進できるとは限りません。

二つ目の門が横方向に設けられていれば、枡形空間の中で右か左へ向きを変える必要があります。

方向を変えるときには、

  • 前方の兵が減速する
  • 後続が追いつく
  • 隊列の向きが変わる
  • 次の門を探し直す
  • 周囲の状況を確認する

といった動きが生じます。

これにより、一つ目の門へ突入した勢いを、そのまま二つ目の門への攻撃へつなげにくくなります。

方向転換の角度や回数は城によって異なります。

直角に曲がる例が多く見られますが、必ず90度とは限りません。

二つ目の門で再び進行を止める

一つ目の門を突破しても、枡形の奥には二つ目の門があります。

攻め手は、枡形内で向きを変えたあと、改めて次の門を攻撃しなければなりません。

つまり、最初の門を破った時点では、まだ主要な曲輪へ入れていないのです。

攻め手が二つ目の門へ向き直り、攻撃の準備をしている間に、守備側は門を固めたり、周囲へ兵を配置したりする時間を得られます。

二つ目の門が大型の櫓門になっている例もありますが、すべての枡形へ当てはまるわけではありません。

周囲から監視・対応しやすくする

枡形空間は、石垣・土塁・塀・櫓などで囲まれます。

守備側は、門へ接近する敵だけでなく、枡形へ入った敵の位置や動きを確認しやすくなります。

城によっては、

  • 石垣や土塁の上
  • 塀に設けられた狭間
  • 櫓門の上部
  • 折れ曲がった石垣の側面

などから、枡形内や門前に対応できる構造が見られます。

ただし、すべての枡形虎口で四方から一斉に攻撃できたわけではありません。

実際にどの方向から対応できたのかは、石垣や塀、櫓、狭間の位置を個別に確認する必要があります。

攻め手が一つ目の門に接近し、枡形空間で向きを変えて二つ目の門へ進む流れと、周囲の石垣・土塁・塀・櫓から守備側が対応する様子を5段階で示した枡形虎口の図解

枡形虎口がつくる4段階の守り

1.門で通れる場所と幅を限定する
2.囲まれた空間へ進ませる
3.枡形内で向きを変えさせる
4.二つ目の門で再び進行を止める

内枡形と外枡形の違い

枡形虎口は、枡形空間を主な防御線の内側と外側のどちらへ設けるかによって、内枡形と外枡形に分けて説明されます。

先に違いを整理すると、次のようになります。

  • 内枡形:主な曲輪や防御線の内側に枡形空間を取り込む
  • 外枡形:主な曲輪や防御線の外側へ枡形状の区画を張り出させる

内枡形とは?

内枡形は、城外側の門を抜けたあと、主な曲輪や防御線の内側に枡形空間が設けられている構成です。

基本的な進み方は、次のようになります。

城外

一つ目の門

曲輪側へ取り込まれた枡形空間

二つ目の門

主要な曲輪内部

内枡形では、外側の門を突破された段階で、攻め手が主な防御線の内側へ入り込むことになります。

ただし、そのまま曲輪内部へ自由に進めるわけではありません。

さらに二つ目の門があり、枡形を囲む土塁や石垣、塀などによって進路が限定されます。

外枡形とは?

外枡形は、主な曲輪や防御線の外側へ、枡形状の区画を張り出させる構成です。

基本的には、主要な曲輪へ到達する前に、枡形区画を通過しなければならない形になります。

城外

一つ目の門

外側へ張り出した枡形区画

二つ目の門

主要な曲輪内部

外枡形は、堀や土橋、石垣、土塁などと組み合わされることがあります。

ただし、曲輪の外にある四角い区画が、すべて外枡形とは限りません。

馬出や出曲輪など、別の防御施設である可能性もあるため、縄張図などを確認する必要があります。

内枡形・外枡形のメリットとデメリット

内枡形と外枡形は、どちらか一方が絶対的に優れた構造というわけではありません。

城の地形、曲輪の広さ、周囲の堀、既存の防御線、守備する人数、改修された時期などによって、適した配置は変わります。

ここでは、軍事的な効果を断定するのではなく、配置上・運用上の傾向として整理します。

内枡形のメリット

内枡形には、次のような利点が考えられます。

  • 主な防御線や曲輪の構造へ組み込みやすい
  • 枡形の周囲を城内側の石垣・土塁・塀と一体的に守りやすい
  • 一つ目の門を突破されても、二つ目の門で再び進行を止められる
  • 主要な曲輪へ入る直前で、敵の向きと速度を制限できる
  • 城内側から守備兵を配置しやすい構成にできる

内枡形では、枡形の周囲が主要な曲輪と連続しているため、城内側から支援しやすい構成になる場合があります。

内枡形のデメリット・注意点

一方で、次のような点も考えられます。

  • 枡形空間の分だけ、曲輪内部で使える面積が減る
  • 一つ目の門を破られると、敵が主な防御線の内側へ入る
  • 枡形が狭い場合、守備側の移動や出入りにも制約が生じる
  • 枡形と門を奪われると、城内側へ進む足がかりにされる可能性がある

ただし、これらの影響は、枡形の大きさや周囲の施設によって変わります。

外枡形のメリット

外枡形には、次のような利点が考えられます。

  • 主要な曲輪へ敵が近づく前に進行を止めやすい
  • 主な城門の外側へ、もう一段の防御区画を設けられる
  • 曲輪内部の面積を大きく減らさずに枡形を設けられる
  • 堀・土橋・門などと組み合わせ、複数段階の防御をつくりやすい
  • 城外へ出る際の活動拠点として利用できる構成も考えられる

主要な曲輪と敵との間に、枡形区画を一つ挟めることが大きな特徴です。

外枡形のデメリット・注意点

一方で、外側へ区画を張り出させるため、次のような点があります。

  • 枡形を築くための用地が必要になる
  • 石垣・土塁・塀・門など、建設や維持の対象が増える
  • 防御線が外側へ広がり、守る範囲が増える場合がある
  • 城内側から十分に支援できない配置では、区画が孤立する可能性がある
  • 敵に奪われると、主な城門を攻撃する足がかりにされる可能性がある

外枡形だから必ず広大になるわけではなく、規模や形は城によって異なります。

比較 内枡形 外枡形
枡形の位置 主な防御線の内側 主な防御線の外側
配置上の利点 城内の防御施設と一体化しやすい 主要な曲輪の手前に防御区画を置ける
主な注意点 突破されると敵が城内側へ近づく 用地や維持対象が増えやすい
現地で見る場所 門を抜けた先の囲まれた空間 主な城門の外へ張り出す区画

実際の防御力は、枡形の分類だけでは決まりません。

門の強度、石垣や土塁の高さ、堀の幅、土橋の位置、周辺地形、守備人数などを組み合わせて見る必要があります。

お城全体の防御施設をどこに配置するかという考え方は、縄張なわばりと深く関係しています。

縄張とは?お城の設計図と曲輪・堀・虎口の関係をわかりやすく解説

枡形虎口・喰違虎口・馬出の違い

枡形虎口と似た役割を持つ入口の工夫に、喰違虎口くいちがいこぐち馬出うまだしがあります。

いずれも敵を簡単に直進させないための構造ですが、基本となる形が異なります。

構造 基本的な特徴 主な役割 現地で見る点
枡形虎口 門と囲まれた空間を組み合わせる 進路変更・速度低下・侵入制限 門の向きと囲まれた空間
喰違虎口 土塁や石垣の開口部をずらす 直進防止・進路の限定 土塁や石垣のずれ
馬出 虎口の前に防御区画を設ける 虎口の防御・出撃時の足場 堀・土塁・門と主な曲輪の関係

枡形虎口と喰違虎口の違い

喰違虎口は、左右の土塁や石垣の端をずらし、入口をまっすぐ通れないようにした虎口です。

枡形虎口では、囲まれた空間と門の組み合わせが中心です。

一方の喰違虎口では、土塁や石垣のずれによって通路を曲げることが中心になります。

ただし、実際のお城では、喰違いと枡形の特徴を組み合わせたような虎口もあります。

名称だけで完全に別の施設と考えるのではなく、現地の進路がどのように曲げられているかを見ることが大切です。

枡形虎口と馬出の違い

枡形虎口は、曲輪へ入る入口そのものの構造です。

馬出は、虎口の前に設けられた独立または半独立した防御区画です。

馬出は、周囲を堀や土塁で囲み、主な曲輪とは土橋などでつながる構成がよく見られます。

虎口を守るだけでなく、城内から兵が出る際の足場として利用されることもありました。

ただし、馬出の入口に枡形状の構成が設けられる場合や、方形の馬出と外枡形が似た形になる場合があります。

馬出の構造と役割については、こちらの記事で詳しく解説しています。

馬出とは?虎口の前を守るお城の防御施設をわかりやすく解説

現地で枡形虎口を見るポイント

枡形虎口では、立派な門だけを見て通り過ぎるのではなく、入口を一つの空間として観察してみましょう。

確認したいのは、次のポイントです。

  • 門や門跡はいくつあるか
  • 二つの門は一直線上に並んでいるか
  • 一つ目の門を抜けたあと、どちらへ進むか
  • 門と門の間に囲まれた空間があるか
  • 空間は石垣・土塁・塀のどれで囲まれているか
  • 門は高麗門・櫓門・薬医門など、どの形式か
  • 石垣や塀のどこから枡形内を監視できるか
  • 狭間や石落としが残っているか
  • 枡形は主な防御線の内側か外側か
  • 堀や土橋とどのようにつながっているか
  • 馬出や他の曲輪と組み合わされているか
  • 門や石垣は現存・復元・整備のどれか
  • 現在の道路や園路で形が変わっていないか
  • 縄張図ではどこまでが枡形とされているか
枡形虎口で確認したい5つのポイント

・一つ目の門を抜けたあと、どちらへ進むか
・二つ目の門はどこにあるか
・門の間を石垣・土塁・塀のどれが囲んでいるか
・枡形は主な曲輪の内側か外側か
・現存・復元・整備のどれにあたるか

枡形虎口は縄張・普請・作事をまとめて見られる場所

枡形虎口は、お城づくりのさまざまな要素が集まる場所でもあります。

敵をどの方向へ進ませるか、どこで向きを変えさせるかを決めるのは、城全体を設計する縄張なわばりです。

石垣・土塁・堀・土橋を築く工事は、普請ふしんにあたります。

門・塀・櫓などの建物を造る工事は、作事さくじです。

つまり枡形虎口では、

  • 敵の進路を決める設計
  • 地形や石垣を整える土木工事
  • 門や櫓を建てる建築工事

が一体となっています。

門だけを見るのではなく、前後の通路や周囲の石垣・土塁まで見ると、お城が複数の工夫を組み合わせて造られていることがわかります。

普請とは?お城づくりの土木工事をわかりやすく解説

作事とは?天守・櫓・門をつくる建築工事をわかりやすく解説

まとめ

枡形虎口とは、二つの門と、その間にある囲まれた空間を組み合わせたお城の入口構造です。

攻め手は、

  1. 一つ目の門を通る
  2. 枡形空間へ入る
  3. 枡形内で進行方向を変える
  4. 二つ目の門を攻撃する

という動きを求められます。

この過程で、攻め手の進路と速度を制限し、隊列を乱し、守備側が対応する時間を増やすことが、枡形虎口の重要な役割です。

ただし、枡形虎口は、敵を必ず閉じ込めて全滅させる装置でも、絶対に突破できない構造でもありません。

門の強度、石垣や土塁の高さ、堀、地形、守備人数などによって、実際の防御力は変わります。

また、枡形虎口には内枡形と外枡形があります。

  • 内枡形は、主な防御線の内側へ枡形を取り込む
  • 外枡形は、主な防御線の外側へ枡形区画を張り出させる

という違いがあります。

どちらにも配置上の利点と注意点があり、一方が絶対的に強いとはいえません。

現地では、門の名前だけでなく、一つ目の門を抜けたあとにどこで向きを変え、どの門へ進むのかを見てみましょう。

門・通路・石垣・土塁・塀・櫓を一つの入口構造として見ると、何気なく通り過ぎていた城門が、お城の守りを読み解ける場所に変わります。

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