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空堀と水堀の違いとは?役割・つくり方・現地での見分け方をわかりやすく解説

空堀と水堀の違いを、城門・橋・石垣とともに比較したお城の基礎講座のアイキャッチ

「水が入っていない堀に、本当に防御力があったのだろうか」

空堀からぼり水堀みずぼりの最もわかりやすい違いは、堀の中に水があるかどうかです。

ただし、どちらも敵の勢いを止め、進路を限定し、守る側が対応しやすい状況をつくる施設です。

水堀は水面で渡りにくくし、空堀は深さや急斜面によって「堀底へ降り、反対側を登る」動きを強います。水堀が必ず空堀より強いわけではなく、橋や虎口こぐち、土塁、石垣との組み合わせが重要です。

この記事のポイント

水堀は、水面によって敵を渡りにくくする
空堀は、深さと急斜面によって敵の動きを止める
どちらも敵の勢いを止め、進路を限定する施設
水堀が必ず空堀より強いわけではない
現在の水の有無だけでは、築城当時の姿を判断できない

水堀は水面、空堀は深さと急斜面で敵を止める違いを断面で比較した図解

空堀と水堀の違いを比較表で確認

まずは、両者の違いを整理してみましょう。

比較項目 水堀 空堀
水の有無 水を張る 水を張らない
敵の止め方 水面を渡りにくくする 深さや斜面で移動を難しくする
築かれやすい場所 平地、低湿地、川・湖・海の近く 山地、丘陵、尾根、斜面
進路の限定 橋や土橋どばしへ誘導する 土橋や狭い通路へ誘導する
維持管理 水源、水位、排水、護岸など 崩落、土砂の堆積、排水など
現地で見る部分 幅、水面、橋、対岸の石垣や土塁 深さ、斜面、堀底、高低差

これは一般的な傾向です。山城に水を利用した場所があったり、平地の城に大規模な空堀があったりするため、立地だけで決めつけることはできません。

水堀とは?

水堀は、堀の中に水をたたえたものです。

川・湖・湿地・海の水を取り込むほか、湧水や地下水を利用する場合もあります。攻め手を橋や土橋へ集め、その先の虎口や城門で迎え撃ちやすくします。

防御力には、水深だけでなく幅、泥、岸の傾斜、水流、対岸との高低差も影響します。水を保つため、流入口・排水先・護岸を管理し、堰や水門を設ける場合もありました。

空堀とは?

空堀は、水を張らず、地面や斜面を掘り下げた堀です。

敵に堀底へ降りて急斜面を登り直す動きを強い、上方から攻撃を受けやすくします。山城や丘陵では、尾根を断つ堀切ほりきり、斜面を縦に延びる竪堀たてぼり、曲輪に沿う横堀よこぼりなどとして使われました。

深さや急斜面、土塁どるいを組み合わせれば強力です。現在は土砂や落ち葉により、当時より浅く見えることがあります。

空堀と水堀の6つの違い

比較するときの6項目

水の有無
敵を止める仕組み
築かれやすい地形
つくり方
維持管理
現在の見え方

1. 水があるかどうか

水をたたえるものが水堀、水を張らないものが空堀です。

ただし、現在水がないから、築城時から空堀だったとは限りません。旧水堀の排水・埋め立てや、後世に水が入れられた例もあり得るため、古絵図や発掘調査資料も確認します。

2. 敵を止める仕組み

水堀は水面によって直接渡りにくくし、橋や土橋へ進路を限定します。

空堀は上下移動を強い、堀底で勢いを止め、斜面を登る敵を無防備にしやすくします。

共通する役割は、敵の勢いを止め、守備側が対応しやすい場所へ誘導することです。

3. 築かれやすい地形

水堀は、平地や低湿地、川・湖・海の近くなど、水を確保しやすい場所で築かれやすい傾向があります。

空堀は山地や丘陵でも造りやすく、地形を掘って曲輪や尾根を分断できます。

山城では空堀が多く、平城では水堀が目立ちやすいものの、これは絶対的な分類ではありません。

平山城のように、山上では空堀、山麓では水堀というように、同じ城の中で使い分ける場合もあります。

平地では水堀、山地では空堀、平山城では両方を使う一般的な傾向を示した図解

4. つくり方

空堀は地面や斜面を掘り、堀底と斜面を整えます。掘った土を土塁や曲輪の造成へ利用する場合もありました。

水堀は地面を掘り、川・水路・湧水・地下水・海水などを利用します。護岸、堰、水門を設ける場合もありますが、工法は地形や水源によって異なります。

5. 維持管理

水堀では水位、排水、泥、護岸を管理します。空堀でも斜面の崩落、土砂や落ち葉、植物、雨水への対応が必要です。

堀底が埋まり斜面が緩くなれば防御力が落ちるため、空堀も放置できる施設ではありません。

6. 現在の見え方

水堀が埋め立て・排水され、空堀のように見えることがあります。空堀は土砂で浅くなり、草木で斜面が隠れることがあります。

史跡整備で復元・修復された場合もあるため、遺構そのものか、整備後の姿かも確認しましょう。

現在も水がある水堀、排水された旧水堀、土砂で浅くなった空堀、整備された空堀を比較した図解

空堀と水堀はどちらが強い?

結論からいうと、一概にどちらが強いとはいえません

堀の強さを決めるもの

堀の幅と深さ
水深・泥・水流の有無
斜面の角度と堀底の形
橋・土橋・虎口・城門の位置
土塁・石垣・曲輪との高低差
守備側が攻撃できる場所

浅く狭い水堀より、深く急な空堀のほうが越えにくい場合があります。反対に、幅が広く足場の悪い水堀は大きな障害です。

橋の先の虎口、内側の土塁や石垣、複数の堀との組み合わせで防御力は変わります。水の有無は、強さを決める一要素にすぎません。

山城・平山城・平城ではどちらが使われる?

城の立地 見られやすい堀 理由
山城 空堀、堀切、竪堀 尾根や斜面を掘って敵の移動を止めやすい
平山城 空堀と水堀の両方 山上と山麓で地形や水の条件が異なる
平城 水堀、大規模な空堀 平地で敵の進路を遮り、入口を限定する必要がある

これは一般的な傾向です。山城でも湧水や池を利用し、平城でも空堀が使われます。

「山城は空堀、平城は水堀」と決めつけず、地形と水をどう守りへ取り込んだかを見ましょう。

現地で空堀と水堀を見分ける方法

現在の水だけで判断しない

堀の幅・深さ・斜面を見る
橋や土橋と虎口の位置を探す
内側の土塁・石垣との高低差を見る
水の流入口と排水先を探す
案内板・縄張図・発掘資料と見比べる

水堀で見るポイント

水面の幅、橋や土橋、その先の門や虎口を見ます。対岸の石垣・土塁との高低差、水の流入口と排水先も確認しましょう。

海や川とつながる城では、水手門、舟入、城下町の水路との関係も見どころです。

空堀で見るポイント

堀底、両側の斜面、曲輪との高低差を見ます。「底へ降りたあと、反対側へ登れるか」と想像すると防御力がわかります。

尾根を横切るのか、斜面を縦に延びるのか、曲輪に沿うのかも確認します。自然の谷との区別は難しいため、形だけで断定しないことが大切です。

現地だけでは判断できない場合

次の資料を確認しましょう。

  • 現地案内板
  • 縄張図なわばりず
  • 古絵図
  • 発掘調査資料
  • 史跡整備図
  • 自治体の文化財解説

旧水堀の排水や空堀の埋没があるため、現在の水だけでは判断できません。

代表的なお城で空堀と水堀を比較

城全体を完全に分類するのではなく、特徴を理解しやすい遺構に注目します。

注目したい堀 見どころ
小田原城 水堀と空堀 城址公園の水堀に加え、戦国期の総構には大規模な空堀が残る
高松城 海水を利用した水堀 海とつながる堀、水門、橋、石垣の関係を見る
高取城 山城の水堀 山頂付近にある現在も水をたたえ水堀を見る
山中城 空堀 障子堀・畝堀など、堀底に残した土の区画を見る
水戸城 空堀 台地を区切る大規模な堀切と土塁を見る

小田原城のように、同じ城で両方を使い分ける例もあります。

空堀・水堀以外にも堀の種類がある

空堀と水堀は、水の有無による分類です。

一方で、堀は別の視点からも分類できます。

  • 堀切・竪堀・横堀:位置や延びる方向による分類
  • 薬研堀やげんぼり箱堀はこぼり:断面形状による分類
  • 障子堀しょうじぼり畝堀うねぼり:堀底の構造による分類

一つの堀が「空堀であり、横堀であり、薬研堀でもある」ように、複数の分類へ当てはまる場合があります。

🏯 現地で見るポイント

城跡で堀を見つけたら、次の順番で観察してみましょう。

  1. 水の有無だけで決めつけない
  2. 堀の幅と深さを見る
  3. 堀底から反対側へ登れそうか考える
  4. 橋・土橋の先に門や虎口があるか確認する
  5. 内側の土塁・石垣・曲輪との高低差を見る
  6. 水の流入口と排水先を探す
  7. 案内板や縄張図と見比べる

「敵はどこを通らされ、守る側はどこから対応するか」を考えると、城の守り方が見えてきます。

空堀と水堀を現地で見るときに確認したい水の有無、幅と深さ、橋、虎口、土塁と石垣のチェックリスト

まとめ

水堀は水面によって敵を渡りにくくし、空堀は深さと急斜面によって敵の動きを止めます。

どちらも役割の本質は共通しています。

  • 敵の勢いを止める
  • 曲輪へ簡単に近づけなくする
  • 橋や土橋へ進路を限定する
  • 門や虎口へ敵を誘導する
  • 守備側が攻撃しやすい状況をつくる

水堀が必ず強いわけではなく、一つの城に両方ある場合もあります。現在水がない堀が、築城時から空堀だったとも限りません。

現地では、堀と橋、虎口、曲輪の位置関係まで観察してみてください。

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