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石垣とは?お城を守る役割・種類・積み方・見どころをわかりやすく解説

お城の石垣を見上げる写真とともに、石垣の役割・種類・積み方・見どころを紹介する記事のアイキャッチ

お城の石垣を見ると、「石を積み上げただけに見えるのに、なぜ長い年月を経ても残っているのだろう」と不思議に感じます。

石垣は敵を防ぐだけの壁なのか、石の形や並び方が城によって違うのはなぜか、気になるところです。

結論からいうと、石垣は、石を積んで曲輪くるわや建物を支え、敵が城内へ入りにくくするための構造物です。

表面の大きな石だけでなく、その背後に詰める栗石ぐりいし盛土もりど、基礎となる地盤、排水までを組み合わせて造られています。

また、石垣の「積み方」には複数の分類軸があります。野面積みのづらづみ打込接ぎうちこみはぎ切込接ぎきりこみはぎは石材の加工度、乱積みらんづみ布積みぬのづみは石の並べ方、算木積みさんぎづみは角部の組み方を表す言葉です。

この記事では、石垣の役割、内部構造、造り方、積み方、現地での見どころを整理します。

ここがポイント

石垣は、防御だけでなく曲輪や建物を支える土木構造物
築石・栗石・盛土などを組み合わせて造られる
野面積み・打込接ぎ・切込接ぎは石材の加工度による分類
乱積み・布積みは石の並べ方、算木積みは角部の組み方を表す

石垣とは?

石垣とは、石を積み、背後の土や上部の土地を支える構造物です。

お城では、斜面に急な高低差を造って侵入を難しくするほか、曲輪の平坦面を確保し、天守・櫓・城門などを載せる土台として使われました。

石垣を築く工事は、土地を削り、盛り、堀や土塁を造る普請ふしんの一部にあたります。

お城に石垣を築いた5つの理由

石垣の主な役割

石垣は、土地・建物・防御・排水・景観を支える
敵が登りにくい高低差を造る
曲輪の平坦面と建物を支える
土砂を押さえ、背後の水を逃がす
城主の権力や築城技術を視覚的に示す

1.敵が斜面を登りにくくする

石垣の急な高低差は敵の移動を難しくします。下に堀があれば、堀と石垣を続けて越えなければなりません。

2.曲輪となる平坦な土地を支える

石垣で盛土を支えることで、斜面や起伏のある場所にも曲輪の平坦面を確保できました。

3.天守・櫓・城門を支える

天守台や櫓台は建物の基礎です。門の両側では通路を絞り、塀や櫓門を支えました。

4.土砂の崩落を防ぎ、水を逃がす

石垣は背後の土を支えます。内部の栗石や排水経路は雨水を逃がす助けとなりますが、水がたまって土圧や水圧が高まると、膨らみや崩落の原因にもなります。

5.城主の権力と築城技術を示す

大手口や本丸周辺には、巨大な石や整った石垣が用いられる例があります。高石垣や美しい角部は防御施設であると同時に、動員力や技術力を示す景観でもありました。

ただし、大きな石や整った石垣ほど価値が高いわけではありません。地形、石材、用途、築造・修理時期によって最適な造りは異なります。

石垣はどのような構造になっている?

表面を構成する大きな石を築石つきいしと呼びます。その背後には比較的小さな栗石を詰め、さらに後ろへ盛土を置きます。

下部には基礎となる根石ねいし、角には角石すみいしが据えられます。築石の接触、地盤、栗石、盛土、勾配、排水が一体となって石垣を安定させています。

築石・栗石・盛土・根石からなるお城の石垣の基本構造

部位 位置・役割
築石 石垣の表面を構成する石
根石 下部に据え、積み上げの基礎となる石
角石 石垣の角と稜線を構成する石
栗石 築石の背後に詰め、築石の安定・荷重分散・排水を助ける石
盛土 曲輪の平坦面や建物を支える土
地山 石垣や盛土の基盤となる自然の地盤
排水経路 背後へ入った水を外へ逃がす経路

栗石だけで石垣を支えているわけではありません。また、すべての石垣に目立つ水抜き穴があるわけでもなく、石の隙間や内部の排水路を利用するものもあります。構造は城や場所、修理時期によって異なります。

石垣はどのように造られた?

石垣普請は、採石・加工・運搬・基礎工事・積み上げ・盛土を組み合わせる大規模な工事でした。

  1. 地形と用途に合う石材を探す
  2. 石丁場で石を採る
  3. 石を割り、必要に応じて加工する
  4. 石材を工事場所へ運ぶ
  5. 地盤や基礎を整える
  6. 根石を据える
  7. 表面の築石を積む
  8. 背後へ栗石を詰める
  9. 盛土と排水を整える
  10. 角部と上部を仕上げる

江戸城の石垣石丁場跡では、採石・加工の場所に加え、運搬路や船積みの港も確認されています。多くの人手と土木技術が必要でした。

工程や道具は、石材、地形、時代、工事規模によって異なります。

石材の採石から築石・栗石・盛土を組み合わせて石垣を造る流れ

石垣の積み方は3つの視点で見る

分類を混同しない

石垣の積み方は、異なる三つの視点で見る
石材の加工度:野面積み・打込接ぎ・切込接ぎ
石の並べ方:乱積み・布積み
角部の組み方:算木積み
一つの石垣に複数の特徴が組み合わさる

分類する視点 主な用語 現地で見る部分
石材をどれくらい加工したか 野面積み・打込接ぎ・切込接ぎ 石の形、接合部、隙間
石をどのように並べたか 乱積み・布積み 横方向の目地、石の配置
角をどのように組んだか 算木積み 角石と角脇石

「野面積みと算木積みはどちらの積み方か」という比較はできません。たとえば、表面が野面積み・乱積みで、角部には算木積みの特徴が見られる場合があります。

実際には中間的な特徴や修理部分が混在します。資料によって用語の使い方も異なるため、一つの呼び方だけで断定できません。

石垣を石材の加工度・石の並べ方・角部の組み方に分けた分類図

野面積み・打込接ぎ・切込接ぎの違い

この三つは、主に石材をどの程度加工して組み合わせたかを見る言葉です。

野面積み

野面積みは、自然石の形を生かして積む方法です。無作為に置くのではなく、石の形や接触する位置を見ながら選び、隙間には間詰石まづめいしを入れることがあります。

石が不揃いに見えても、雑な工法ではありません。

石垣山城の野面積みの石垣

打込接ぎ

打込接ぎは、石同士が接する部分を加工し、隙間を小さくしながら積む方法です。目地が詰まって見える傾向がありますが、加工の程度には幅があり、間詰石が使われる場合もあります。

丸亀城の打込接ぎの石垣

切込接ぎ

切込接ぎは、石材を丁寧に加工し、接合部を合わせて積む方法です。目地が整って見えやすく、城の正面や重要な場所に用いられる例があります。

ただし、「常に最も強い」「最も新しく優れた工法」とは断定できません。安定性は石材だけでなく、地盤、勾配、内部構造、排水、施工状態にも左右されます。

江戸城の切込接ぎの石垣

分類 石材の加工 見た目の傾向 現地で見る部分
野面積み 自然の形を生かす 石の形や隙間が不揃い 大石と間詰石の組み合わせ
打込接ぎ 接合部を加工する 目地が小さく見えやすい 石同士が接する部分
切込接ぎ 石材を丁寧に加工する 石の形と目地が整いやすい 石の輪郭と隙間

境界は明確とは限りません。古そうに見えるから野面積み、目地が整うから新しい石垣、と見た目だけで年代や工法を決めないようにしましょう。

乱積み・布積みとは?

乱積みと布積みは、石材の加工度ではなく、石の並べ方を表します。

乱積みは、石の形に合わせて不規則に組み、横方向の目地が一直線に通らない並べ方です。布積みは、横方向の目地をある程度そろえる並べ方です。

野面積みと乱積みは同じ意味ではありません。野面積みで乱積み、打込接ぎで乱積み、切込接ぎで布積みなど、加工度と並べ方を組み合わせて表現できます。

布積みも、横目地が完全な一直線でなければならないとは限りません。乱積みと布積みの中間に見える石垣や、部分ごとに並び方が変わる石垣もあります。

石垣の角を強くする算木積み

算木積みは、石垣の角部を組む技術です。

長方形の角石を、長辺が見える段と短辺が見える段が交互になるように重ね、横の角脇石と組み合わせます。二つの面が交わる角を安定させ、明確な稜線を造る役割があります。

ただし、角に長い石があるだけで完成された算木積みとは断定できません。初期の石垣では組み方が整っていない例もあり、城や時期によって完成度が異なります。

松山城の石垣、算木積み

石垣の勾配と反りはどう見る?

石垣には、背後の土を支えるための勾配があります。ただし、すべての石垣が大きく反っているわけではありません。

直線的に立ち上がるものもあれば、下部を緩やかにして上部を急にするものもあります。形は高さ、地盤、石材、用途、築造技術、修理の有無などによって変わります。

丸亀城では「扇の勾配」、熊本城では「武者返し」という呼び方が使われますが、全国すべての石垣へ当てはめる用語ではありません。

現地では、真正面から見上げるだけでなく、石垣の端から稜線を見ると、直線か、途中から勾配が変わるかを確認しやすくなります。

石垣に残る矢穴・刻印・間詰石

矢穴

矢穴やあなは、石を割るために設けた穴です。弓矢が刺さった跡ではありません。穴の形や間隔は加工方法を考える手がかりになりますが、それだけで年代を断定することはできません。

刻印

刻印こくいんは、石材に刻まれた文字・記号・図形などです。石材の管理、採石や運搬、普請の分担、担当集団などと関係した可能性があります。

ただし、意味が判明していないものも多く、すべてを大名の家紋と説明することはできません。

間詰石

間詰石は、大きな築石の隙間へ入れる小さな石です。築石の位置を安定させますが、経年変化や修理で抜け落ちることもあります。

矢穴や刻印だけでなく、周囲の石の組み方まで見ましょう。

石垣はなぜ崩れる?修復はどう行われる?

石垣は修理されながら残る

石垣は強固でも、条件が重なると変形・崩落する
地震、豪雨、排水不良、土圧、地盤変化、樹木の根などが影響する
修復では石の位置と状態を記録し、内部を調査して積み直す
現在の石垣が、すべて築城時のままとは限らない

石垣は、地震、豪雨、背面にたまる水、地盤の変化、土圧、石材の劣化、樹木の根、間詰石の抜けなどによって変形します。表面が前へ膨らむ「はらみ」は、崩落へつながる変状の一つです。

文化財石垣の修復では、一般に次のような作業が行われます。

  1. 測量や写真で現状を記録する
  2. 石へ番号を付ける
  3. 石を順番に外す
  4. 栗石、盛土、地盤、排水を調査する
  5. 必要な補修や安全対策を行う
  6. 可能な限り元の石を元の位置へ戻す

修復では、伝統的な構造を尊重しながら、必要に応じて新しい石や補強、排水対策を加える場合があります。現在の石垣には、築城時の石、後世の積み直し、史跡整備の補修が混在します。

土塁・石垣・切岸の違い

構造 主な材料・造り方 主な特徴
土塁 土を盛る 曲輪を囲み、防御線や遮蔽を造る
石垣 築石・栗石・盛土などを組み合わせる 急な高低差や建物の土台を造る
切岸 自然の斜面を削る 山城の斜面を急にする

一つの城で土塁と石垣を使い分けたり、土塁の表面へ石を積んだり、切岸の一部へ石垣を築いたりする場合があります。

石垣がある城が、土塁中心の城より価値が高いわけではありません。地形と築城目的に応じた使い分けを見ることが大切です。

土塁とは?お城を守る土の壁の役割・構造・見どころをわかりやすく解説

🏯 現地で見るポイント

石垣は、正面の大きな石だけを見るより、加工・並び・角・勾配・痕跡の順に観察すると特徴をつかみやすくなります。

1.石材の加工を見る

自然の形を残しているか、接合部だけを加工しているか、輪郭まで整えているかを確認します。ただし、見た目だけで工法や年代を断定しません。

2.石の並びと隙間を見る

横目地がそろうか、大石の隙間に間詰石があるかを見ます。途中で石の色や大きさ、並び方が変わる場所は、増築や積み直しの境目かもしれません。

3.角部を見る

角石の長辺と短辺が交互に見えるか、角脇石とどう組み合わさるかを確認します。正面だけでなく、角の両面を見比べましょう。

4.勾配と周囲の施設を見る

下部と上部で勾配が変わるか、直線的かを見ます。さらに、上に曲輪・門・櫓・天守のどれがあり、下に堀があるかを確認すると、その石垣の役割がわかります。

5.矢穴・刻印・修理跡を見る

矢穴や刻印、水抜き穴、補修材、新しい石を探します。案内板や整備図があれば、修理範囲と照らし合わせてください。

下部・上部・側面から見て、何を支え、どの方向を守った石垣か考えると、城全体の構造が見えます。

お城の石垣を現地で見るときの5つのチェックポイント

まとめ

石垣とは、石を積んで曲輪や建物を支え、敵が城内へ入りにくくするための構造物です。

表面の築石だけでなく、根石、栗石、盛土、地盤、排水を組み合わせて造られています。採石・加工・運搬・基礎工事まで含む、大規模な普請でした。

石垣の見方は、次の三つに分けると整理しやすくなります。

  • 野面積み・打込接ぎ・切込接ぎ:石材の加工度
  • 乱積み・布積み:石の並べ方
  • 算木積み:角部の組み方

現地では、石の大きさだけでなく、目地、間詰石、角、勾配、矢穴、刻印、修理跡に注目してください。堀、曲輪、門、櫓との位置関係まで見ると、石垣が何を支え、どこを守ったのかがわかります。

石垣を含む、曲輪・堀・土塁などを築く土木工事全体については、次の記事で解説しています。

普請とは?お城づくりの土木工事をわかりやすく解説

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